摘要
<ことば>は<ひと>によって生み出され、<ひと>によって使われるというのは自明の理であるが、それにも拘わらず、伝統的な言語研究では<話者>は極めて軽い扱いしか受けてこなかった。<話者>は規則が生成してくれた文を口にするだけとでもいった存在感の薄いものであった。認知言語学では<発話>に先立つ<事態把握>と呼ばれる<話者>の営みに注目することにより、<認知の主体>としての<話者>の役割に正当な位置づけが与えられることになった。本稿では、現在の認知言語学の洞察をそれぞれの時代の制約の中で興味深い形で先取りしていたと思われる二人の西欧の研究者を紹介する。日本語との関連でいえば、バイイは<自発>という概念、ヘアファールトは<主観的把握>という概念の重要性と位置づけに関して、確かな洞察を有していたと思われる。
出处
《日语学习与研究》
2010年第5期1-6,共6页
Journal of Japanese Language Study and Research