日本古代の歌垣研究の進路

日本では8 世紀頃に成立した『古事記』、『日本書紀』、『万葉集』、『風土記』に歌垣の記事があり、そこには男女が結婚や恋愛を目的にお互いに歌を掛け合うことが記載されている。しかし、長期間にわたって、歌垣研究の直面している難問は何よりも詳しい文字記載のないために8 世紀の数少ない資料をもとに歌垣の実態を推測するしかなかった。一方、歌垣の分布は日本から中国の南部を経てインドシナ半島の諸民族において濃密である。良く似ている生存条件のもとに、歌垣といった風俗における類似性や共通性を形成してきた。したがって、中国少数民族の生きている歌垣を導入して比較研究を進めるのは、有効であり、近道であろう。