「田園の憂鬱」と「都会の憂鬱」との比較分析——「憂鬱」の意味変化

1序章佐藤春夫は明治、大正、昭和という三つの時代にわたり活躍した。詩、小説、絵画、建築など、その溢れる才能はいくつもの分野で発揮され、色とりどりの花を咲かせた。芥川龍之介と肩を並べる大正期を代表する作家と言われ、同時に中国文学に関してはその理解者として明治期と昭和期を結ぶことができた偉大な文学者であった。

有対自他動詞の選択に関する日本語母語話者と学習者の比較

1研究目的日本語の有対自他動詞1は様々な文法項目に緊密に関わっており、習得の難点である。可能に関して言えば、有対自動詞が特に難しくて、本来自動詞で表すべきところ、学習者には可能形のほか、しばしば他動詞の可能形が用いられる傾向があると、これまで多くの研究者によって指摘されてきた。

谷崎潤一郎「秘密」論——「私」という人間像の表と裏

1冒頭部の分析から「秘密」(1)は、25歳だった谷崎が1911(明44)年11月に商業雑誌『中央公論』に発表した短編小説であり、原稿料が貰えたプロ作家としてのデビュー作である。「刺青」「麒麟」「少年」「幇間」などとともに、翌月に刊行された第一創作集『刺青』に収録されている。「刺青」「少年」のような初期の代表作とまではいえないが、『陰影礼賛』などにつながる闇の中の美を潜在させているとの評価も存在している(2)。テクストの冒頭は次のように書き出される。

使役文における被使役者とその格の有無が文の意味に与えるもの 古代語の使役の性質と文法的意味に照らして

1はじめに『日本語文型辞典』によると、使役文の意味は、強制、指示、放任、許可、放置、介護、自責、原因の8つに分類されている。使役文において、他動詞文ではヲ格が必ずあるため、動作主(被使役者)はニ格となり、自動詞文ではニ格とヲ格が存在する。

テレビドラマにおける役割語 中国人のキャラクターイメージの分析

1はじめに最近のテレビドラマで時々中国人の役柄を見かける。日本人が中国人の役を演じたり中国人が中国人の役を演じたりと、形式は様、どの形式に於いてもその人物の特徴的な話し方が印象深い。これは漫画、子供向けの本やテレビ番組でよく見られる役割語を連想させる。役割語は語尾に特徴的な言葉を取り入れることにより、独特なキャラクターのイメージを作る日本語の特徴の一つであるとも言えよう。